ご相談内容
夫の浮気が原因で、子どもを連れて家を出て別居しています。生活費は、実家からの仕送りと、私のパートでなんとかギリギリ、子どもを養って育てています。
夫に生活費をほしいとお願いしても、お前が勝手に出ていったのだから、払う必要はないと言って一切払ってもらえないまま2年間が経ちました。
夫にはもう愛情はないので、離婚したいと考えていますが、離婚にあたって財産分与を計算するときに、この2年間の生活費は考慮してもらえますか。
婚姻費用
民法752条・760条に定めているように、夫婦は、お互いに助け合う義務があり、結婚生活における生活費、子どもがいれば、子どもの生活費も含めて、お互いに分担しあう義務があります。
この生活費とは、お互い同レベルの生活ができる金額を指しています。
これは、夫婦が仕事や家庭の関係で別居していても、また喧嘩して実家に帰っていても、またいづれ離婚する予定で別居していても、夫婦でいる限りは、その義務を負います。
従って、ご相談者様の場合も、2年間夫婦でいて、ましてや子どもも連れて出ているわけですから、夫が拒否しようと、夫には妻と子どもの生活費である婚姻費用を支払う義務があります。
財産分与と婚姻費用
夫が別居中の婚姻費用を払っていないにも関わらず、妻と子どもが生活しているということは、妻がその分の婚姻費用を立替えて支払っているということなので、財産分与の中でそれを返してもらうよう請求することができます。
裁判所も、「当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のやめの給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる」(最判昭和53年11月14日民集32巻8号1529頁)と述べています。
法務省も、「婚姻費用の分担義務を履行しなかったことによって、その特有財産からの支出を免れているときは、婚姻費用を支出した者がその特有財産の維持に寄与したものと評価できる余地がある」として、婚姻費用の不払い分を相手の固有財産から清算させる余地を認めています。
金額
どのくらいの婚姻費用を分担すべきは、夫の収入と妻の収入、子どもの年齢を基本として、裁判所のホームページにも表が出ていますので、参考にしてください。
その中で、例えば月20万円の婚姻費用が2年間支払われなかった場合、480万円が未払いとなります。
その金額を、財産分与の一部として、上乗せして請求できます。
または、子どもの生活費である養育費分だけを切り分けて、過去の未払いの養育費として、離婚後の養育費として合わせて請求することも可能です。
弁護士を選任すると、より専門的な算定根拠を用いた上、最大の金額にするよう主張を展開していくことになります。