
ご相談内容
夫と離婚するために、婚姻費用や子供の養育費を計算しようとしています。
裁判所のホームページや、ウエブの記事などを見ると、夫と妻の収入から計算するときに、年収から「基礎収入」を出すようです。
お互いの年収を足して2で割って、足りない分を請求すればいいと思うのですが、この「基礎収入」とはなんでしょうか。
基礎収入の考え方
養育費や婚姻費用を算出するときの「標準算定方式」の考え方を理解するうえで、重要なのは、「基礎収入」です。
例えば、夫婦の婚姻費用は、お互い同程度の生活レベルを維持するという考え方に基づいています。
片方だけが贅沢な生活をして、もう一方が苦しい生活を強いられるのは、夫婦の平等な分担義務から外れています。しかし、だからと言って、ご相談者様の問いのように、二人の総収入を足して半分にすればいいということではありません。
なぜなら、収入が多い場合は、その収入から税金を支払い、仕事を維持するために不可欠な経費を、より多く支払います。単純に額面だけの支払いを足した場合、収入が少ない方が余裕のある生活ができることになってしまい、不平等になるためです。
そこで、仕事をするために不可欠な金額を差し引いてから、使えるお金として、計算します。そこで計算された金額が、「基礎収入」となります。この「基礎収入」をもとにすることによって、お互いに同水準になります。
基礎収入額になるため、何が引かれているのか
額面金額から「基礎収入」額になるために、どのような種別が差し引かれているのでしょうか。
「標準算定方式」が一般的になる前は、額面金額から、大きくわけて3つの金額を差し引いていました。
この3つとは、
1 公租公課
2 職業費
3 特別経費
です。
公租公課・職業費・特別経費
公租公課とは、いわゆる税金などで、所得税、住民税、給与所得者にかかる社会保険料です。
職業費とは、給与所得者について想定されるもので、就労するために必要となる、必要最低限の被服費、通信費、交通費などです。
特別経費とは、保険医療費などです。
標準算定方式
基礎収入は、額面から上記の金額を差し引いて、基礎収入を出すわけですが、人によって必要最低限の経費の考え方が異なるために、標準算定方式は、個別に計算せずに、平均的にどのくらいかかるものかが、前提として計算されており、収入に応じた基礎収入の割合が決まっています。
この割合に従って、基礎収入が計算されます。
具体的には、給与所得者の場合、基礎収入割合は、収入別に54%から38%となっており、高額所得者の方が割合は小さくなっています。
また、自営業者の場合には、基礎収入割合は、61%から48%とされています。
基礎収入割合
司法研修所編「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」法曹界(2019年)によれば、下記の基礎収入割合が提示されており、現在はこの割合のもとで、基礎収入が決定されることがほとんどです。
なお、基礎収入割合は、2019年に改正されており、改定前の算定表を用いた計算になっていることも未だに散見されています。
給与所得者の額面収入(万円) | 割合(%) |
0 ~ 75 | 54 |
~ 100 | 50 |
~ 125 | 46 |
~ 175 | 44 |
~ 275 | 43 |
~ 525 | 42 |
~ 725 | 41 |
~ 1325 | 40 |
~ 1475 | 39 |
~ 2000 | 38 |
自営業者(万円) | 割合(%) |
0 ~ 66 | 61 |
~ 82 | 60 |
~ 98 | 59 |
~ 256 | 58 |
~ 349 | 57 |
~ 392 | 56 |
~ 496 | 55 |
~ 563 | 54 |
~ 784 | 53 |
~ 942 | 52 |
~ 1046 | 51 |
~ 1179 | 50 |
~ 1482 | 49 |
~ 1567 | 48 |