妻に対して、夫がバーで飲んだツケの支払えと請求されています

ご相談内容

夫は酒好きで、仕事帰りによく飲んできます。毎晩、行きつけの居酒屋で、お小遣いの範囲で飲んできていると思っていたのですが、先日、バーの経営者と名乗る女性が自宅に来て、夫がツケで飲んでいたという金額の請求書を持ってきました

3ヶ月で200万円で、到底支払える金額ではありません。帰宅した夫に問い詰めたのですが、そんなに高額だとは知らなかったと言っています。

その女性は、夫の借金は妻にも支払い義務があると言って、一週間以内に振り込むように言われました。

これは、夫婦の借金として、私は支払わなければならないのでしょうか。

婚姻費用分担

結婚すると、2人の結婚生活を維持するために、必要な費用がかかります。

民法760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めています

また、判例(大阪高裁・昭和33年6月19日)でも、「夫と妻が共同生活において財産収入、社会的地位等に相応した通常の生活を維持するに必要な生活費は、これを760条にいわゆる婚姻から生ずる費用(婚姻費用)というべきであり」と定めています。

これは、たとえ、夫婦が別居中であっても、生活費と婚姻費用は分担すべきであるとしています。

債務も連帯責任

民法761条では、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りではない」としています。

つまり、借金などの債務も、連帯するとしていますが、この範囲は「日常の家事に関して」という部分です。

何が日常の家事の範囲となるのでしょうか。

飲み屋のツケに対する責任

ご相談者の場合は、夫が飲んできたバーのツケを、妻が支払うよう、バーの経営者から迫られています。

一般的に、日常の家事とは、夫婦が生活していくために必要な、食料や衣料品や日用品、住居に関係するものの金額、または、生活に密接している範囲の支払いを指します。

例えば、毎晩、晩酌するために、夫が酒屋で購入してきたアルコールの代金の支払いを、酒屋が妻に要求してきたとき、これを断ることは難しいでしょう。毎晩自宅で晩酌していること、その酒を夫が購入していること、晩酌が日常生活であること、から、この金額は、日常の家事の範囲とされます。

ただし、今回のように、夫が高額なバーで飲んできた場合、妻はこれを知らず、またその金額も生活費を超える「日常の家事」の範囲とは到底思えません。その場合、妻に支払い義務は発生しません。
なお、ツケは、民法が改正され、時効期間が変わりました。そのため、ツケ債権の回収には動きがあります。

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