ご相談内容
離婚の話し合いをしている最中に、妻が子供を連れて家を出て実家に帰ってしまいました。
子供の親権者は妻とすることも、養育費を支払うことも納得しているのですが、妻と一緒に管理していたいくつかの銀行口座の預金の金額を確認するために、残高照会したところ、全部解約されて引き出してあり、驚きました。
妻に連絡したところ、生活費として持って出たと主張しています。
今後、離婚にあたって、離婚調停になるかと思っていますが、妻が持ち出したお金は、婚姻費用となるのか、財産分与として考えるのか、どちらがよいでしょうか。
婚姻費用と財産分与
離婚にあたっては、お金の問題は避けては通れません。
特に、子育てをして専業主婦をしていた妻にとっては、離婚後、一人で子供を育てながら、食べていくために仕事も始めなければなりません。
将来の不安から、別居する時に、家にあるお金を全部持ち出してしまうことも少なくありません。
離婚するにあたって、大きく4つのお金について決めておく必要があります。
1.「婚姻費用」
結婚生活を送る上でかかる費用です。結婚したら、お互い同じレベルの生活をするために、収入の多い方が少ない方の生活費を支払い、結婚生活を維持します。これは、離婚するまでは継続しますので、離婚前に別居していても、請求できます。
2.「慰謝料」
相手の行為によって、受けた精神的・肉体的苦痛に対する損害賠償請求です。不貞行為やDVなどで、離婚の原因を作った相手方に請求できます。なお、慰謝料は、原因となる行為を知った時から3年が経過すると請求できませんので、注意してください。
3. 「財産分与」
夫婦が婚姻生活を行った間に形成された財産については、基本的には2分の1ずつ分けます。専業主婦など収入がなくても、また、家や預金口座など名義が一方しかなくても、同じく共有財産として、分けることになります。この財産分与は、老後の生活に関わる「年金分割」も考慮してください。
4. 「養育費」その他
未成年の子供がいる場合は、子育てをする側が、子供と離れて生活する側に請求できます。その他にも、年金分割があります。
財産分与として扱う
ご相談者様のように、離婚前に、相手方が別居する時に、財産を持ち出してしまった場合は、最終的な財産分与において、この金額は受領済として扱うことが一般的です。
お金を持ち出して、別居している場合、このお金は別居開始後の最初にかかる費用に使っていることも多く、別居して全部使ってしまっていることもあります。
それにも関わらず、これを婚姻費用とすると、別居した側の生活が成り立たなく恐れがあるからです。従って、持ち出した財産については、財産分与として扱い、婚姻費用については、別に計算して支払います。
婚姻費用として扱う
ただし、持ち出した金額や、離婚にあたっての背景などを考慮して、婚姻費用として主張していくこと可能性もあります。
持ち出した金額が、数ヶ月の婚姻費用にあたるような場合では、先にこれを婚姻費用として支払ったと処理することもありえます。
いづれの場合も、もともと銀行口座にあった金額は把握しておく必要がありますので、通帳記帳して証拠は残しておいてください。これがのちにトラブル回避につながります。