妻が、別居する時に、夫名義の銀行口座から100万円出して、家を出ていきました

ご相談内容

結婚後すぐに子供が産まれてから、子供や仕事について、妻と喧嘩が耐えなくなり、お互い離婚を考えるようになりました。

妻は一日も早く別れたいらしく、一緒に生活するのは耐えられないと、子供を連れて実家に帰ってしまいました

しばらくして、自分の銀行口座の残高をみると、妻は、別居時に、無断で私の口座から100万円引き下ろしていたようです。

一緒に生活しているときは、銀行のカードを持っていたので、それを使って、別居後も10万円単位で引き出していました。

離婚する予定の自分から、黙ってお金を持ち出したことが許せません。これは損害賠償を請求できるでしょうか。

財産分与

民法768条1項に「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定めています。

これは、夫婦が結婚している期間中に、二人で協力して築いた財産を離婚時には、二人でそれぞれ分け合うことを”財産分与”といいます。

財産分与は、夫婦が結婚している間に築いた財産を、貢献度に応じて分け合う財産分与だけでなく、離婚後一方が生活が困窮するときに、独立できるまで生活費を援助する扶養的財産分与や、慰謝料の取り決めが十分にされていないときに慰謝料を含めて財産をわける慰謝料的財産分与などもあります。

別居時の財産の持ち出し

夫婦の一方が、別居を決意したときに、生活費として、貯金を持ち出すことはよくあります。

別居時の財産の持ち出しは、実質的共有財産の2分の1以下であれば、違法性はありません。したがって、今回のご相談者様は損害賠償請求はできません。

東京地裁平成4年8月26日の判決にも「婚姻関係が悪化して、夫婦の一方が別居を決意して家を出る際、夫婦の実質的共有に属する財産の一部を持ち出したとしても、その持ち出した財産が、将来の財産分与として考えられる対象や範囲を著しく逸脱するとか、他方を困惑させる等不当な目的をもって持ち出したなどの特段の事情がない限り違法性はなく、不法行為とならないものと解するのが相当である」としています。

別居にあたって

離婚をすると決めた時、将来の財産分与に備えて、夫婦の貯蓄など動産や不動産、株券、など全ての財産を把握するようにしましょう。

また、一旦別居してしまうと、たとえ自分名義の保険や銀行口座であっても、印鑑や通帳を渡してもらったり、取りに帰ることが難しくなります。

トラブルを避けるためにも、別居するときには、手持ちの現金、自分名義の財産、印鑑などを持ち出してください。たとえ、相手方の財産であっても、離婚時の財産分与の計算で、財産を隠されないように、銀行の通帳、株券、保険証書、不動産関係などの証書類をできる限りコピーしておくことをお勧めします。

そして、別居してからの生活費を得るために、「婚姻費用分担請求調停」を申し立てるのも方法の一つです。婚姻費用分担調停を申し立てる時期は、とにかく早いほうがよいでしょう。理由は、申立の時点から、請求が起算されることになることが(慣習上)多いからです。

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