妻が精神病にかかり、会話も成り立ちません。疲れ果てており、離婚したいのですが、認められますか?

ご相談内容

妻が、3年前から強度の躁鬱病にかかり、家事もできないため、夫と妻の親が、介護と日常の家事をしています。
介護には尽くしていますが、回復の見込みはないと、医者からも言われており、このままでは仕事にも支障があります。申し訳ない気持ちもありますが、疲れ果てており、離婚したいと考えています。このような場合に、妻を見捨てて離婚の請求は可能でしょうか。
また、その状態の妻との離婚手続きはどのように進められますか?

ご回答

大変だと思います。
介護というかは別として、精神的に安定していない方のそばにいると、自分が当たり散らされ、持たなくなってしまうこともあると思います。思い切って離婚をするのも一つかとは思うのですが、他方で自分勝手な理由での離婚は法律上困難を伴います。

配偶者が
- 強度の精神病に罹患し
- 回復の見込みがなく
- 離婚後に、配偶者の療養や監護に具体的な方法がある

場合には、離婚が認められると法律上は定めています。

しかし、双方合意で離婚の結論に至ることは当然自由です。

回復の見込みがない強度の精神病とは

配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない、ということは、離婚原因の一つになります(民法770条1項4号)。

精神病とは、
- 統合失調症
- 躁鬱病
- 偏執病
- 初老期うつ病
などでです。

アルコール依存症、麻薬中毒、ヒステリー、ノイローゼなどは該当しません。

強度のとは、
- 夫婦の協力義務を(民法752条)をはたせない
- 精神病が回復の見込みがない
ことを指します。

療養・監護の具体的方法とは?

本来、夫婦は協力扶助義務があり(民法752条)、配偶者が病気になったときこそ、強く必要になります。

この点において、民法は、「諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度その方途の見込みのついた上でなければ、離婚の請求は許さない法意である」旨を判事して、離婚後病気の配偶者に対して、十分な保証が必要である、としています。

ただ、近時は緩和されている印象です。たとえば、
- 親族等による、病気の方の引き受け体制がある
- 離婚配偶者も、離婚後も扶養・看護に全力をつくすと言っている
- 離婚時の財産分与により、療養費や生活費の相当額が負担される
- 国の保護による療養が可能である
などの事案で、離婚を認めています。

精神病以外の難病、重度の身体障害の場合

民法770条1項4号の「強度の精神病」にあたらない精神病や「回復の見込みがない」とはいえない状態であっても、婚姻を継続し難い重大な事由に該当することもあります。

強度の精神病以外の難病や重度の身体障害の場合にも、夫婦の協力義務を果たせず、精神的交流を阻害されている場合は、同5号に該当し、離婚が認められる場合もあります。

つまり、婚姻を継続し難い重大な事由に該当するかどうかは
- 病気の程度と将来の見通し
- 離婚請求者が、相手にとってきた態度
- 離婚請求者の困っている状況
- 経済的負担
- 婚姻の破綻を示す具体的な状況
- 離婚しても、できる限りの協力をするか
- 病気の配偶者の離婚の意思
など、諸般の事情を検討して、判断されます。

離婚の手続き

病気の配偶者が、意思能力がある場合と、ない場合で手続き方法が変わります。

配偶者が、離婚の意味と効果が理解できる意思能力がある場合は、協議離婚あるいは調停離婚によって離婚できます。

配偶者が、離婚について意思能力がない場合は、
家庭裁判所に後見人の申し立てをして、後見開始の審判をうけます。その後、家庭裁判所で選任された成年後見人または成年後見監督人を被告として、家庭裁判所に離婚の訴えを提起します。

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