夫婦間での悪意の遺棄とは?

ご相談内容

結婚後すぐから、妻と金銭感覚の違いや、私の親を毛嫌いすることなどから、性格の不一致が目立つようになりました。

妻は、専業主婦なのですが、家事も満足にできず、洗濯ものをためたり、クリーニングにも行ってくれないので、私も仕事に支障が出てきているために、離婚したいと伝えました。

しかし、妻は、離婚はしたくないと拒否するために、もう家に帰るのも嫌になってきました。家を出て、ひとり暮らしをしようと考えていますが、友人から、別居すると、「悪意の遺棄」になり、反対に不誠実な態度として、反対に離婚ができなくなると言われました。

「悪意の遺棄」とはどういう意味でしょうか。

悪意の遺棄とは

悪意の遺棄とは、法律用語で「どういう結果になるかを知りながら、その義務を怠ること」を言います。

「悪意」とは、一般的には、「他人に害を与えようとする気持ち」と悪い意味として使われますが、法律用語では、悪意は道徳的な害意ではなく、「ある事実を知っていること、知りつつあること」を意味します。

「遺棄」は、刑法上では、一般的な意味と同じく「置き去りにする」ことを意味しますが、民法上では「当事者間で義務を怠ること」を意味します。

つまり、相手が困ることが分かっていながら、身勝手な行動をとると、「悪意の遺棄」とみなされます。

夫婦の3つの義務

民法上の夫婦の主な義務は、

ー 一緒に生活する「同居義務」
ー 協力して家庭を築く「協力義務」
ー 配偶者を養い補助する「扶助義務」

の3つがあります。

夫婦間の悪意の遺棄

つまり、夫婦の3つの義務を、故意に(わざと)違反し、相手に多大な苦痛を与えた場合は、悪意の遺棄の疑いがあります。

同居義務違反では、
例えば、家族を無視して黙って家を出ていった、勝手に実家に行ったきり戻ってこない、浮気相手の家に入り浸って帰ってこない、などが該当します。

扶助義務違反では、
収入がない、または少ない配偶者に対して、生活が困窮するとわかっているのに、生活費を渡さない、などが該当します。

協力義務違反では、一方が家族を顧みず一人だけ遊び歩いている、家事を全くしない、などが該当します。

事情によってさまざま

夫婦の共同生活形態は、さまざまです。上記のケースも、一概に全てが悪意の遺棄に該当すると決めつけるわけにはいきません。

例えば、同居義務違反で、一方が家を出ていても、単身赴任である、子どもの学校の関係、夫の暴力や、親族との著しい不和などがあれば、該当しない場合もあります。

同居義務違反でも、浮気相手と同棲するために出ていった場合は、悪意の遺棄かまたは不貞行為や婚姻を継続し難い事由に重きをおいて、判断されることもあります。

扶助義務違反でも、働かずただ小遣いをせびっている場合など、さまざまであり、実際に、悪意の遺棄だけで判断されず、婚姻を継続し難い重大な事由として、判断されることが多いようです。

特に、専業主婦として従事していた方の場合どうしても、社会から遠ざかってしまっている状態にあることが多いので、その観点からも3つの義務違反について考えていくことが重要なのではないでしょうか。

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