慰謝料の額を決める事情とは

慰謝料とは

「慰謝料」とは、精神上の損害(damages for mental or physical suffering) のことであり、いわゆる財産上の損害と対になるものです。

これは、「財産以外の損害」とか「無形の損害」「金銭価値を有せざる損害」と表現されることもあります。

古い裁判例では、慰謝料の「慰謝」を「慰藉」という漢字をあ建てていましたが、現在は「藉」の漢字が当用漢字表にないために、慰謝料というのが一般的です。

慰謝料額を算定にするにあたっては、数値化されたものはなく、事実や事情に基づいて、「裁判官の自由裁量」に委ねられています

算定の具体的諸事情

裁判所において、一般的に慰謝料額が算定される判断要素としては、
「被害の程度」
「侵害行為の態様」
「双方の過失の有無や程度」
などが考慮されていると言えます。

では、それらの具体的諸事情とはどのようなものがあるでしょうか。

1 有責行為の内容

不貞行為、遺棄、暴力、暴言などの有責行為の内容です。

これらの行為の有無、悪質性の判断にあたっては、当事者の夫婦関係、家族関係、など真実の状態を解明、把握する必要があります。

この真実を把握することは、難しく、困難な判断にはなりますが、これが一番重要な慰謝料算定の要素です。

2 被害配偶者が夫か妻か

これは、未だに離婚において、生活能力や再婚の見込みなど考慮すると、再就職や、子どもを抱えて生活する女性の方が不利なことが多いようです。

従って、離婚後の不利益は女性の方が大きいことから、その点も考慮されます。

3 婚姻期間・同居期間

婚姻期間や同居期間が長くなればなるほど、婚姻や同居を継続する期待が大きくなることから、その期待が破られると、その分だけ精神的苦痛が大きくなることから、この点も考慮されます。

4 有責行為の前後の比較

有責行為があった前は、関係が良好だったにも関わらず、相手の有責行為によって、その関係が破綻した、つまり、有責行為が原因となって婚姻が破綻したのか、またはもともと当事者の関係性は悪く、その他の事情により、すでに婚姻が破綻していたので、有責行為がある前後では関係性は変わっていないのか、その点も慰謝料の算定には考慮されます。

5 加害者と被害者の職業、社会的地位

加害者が社会的地位があり、高収入であり、資産も十分ある場合には、支払い能力が十分ある場合は、その分認められる金額も高くなる傾向にあります。

また、被害者の年齢が若く、まだ離婚しても再婚の余地がある場合は、減額の可能性もあり、逆に再婚の可能性がなければ増額の余地もでてきます。

つまり、離婚後の妻の自立的な生活設計の基礎を確立する必要があるからです。

6 その他

その他、子どもがいるか、被害者が再婚したか、加害者が義務である子の養育費を払っているか、離婚時には財産分与を受けているか、被害者が加害者の両親などの面倒をみてきたか、など様々な状況も考慮されます。

もっとも、慰謝料を請求するにはこれまでの人間関係や経緯など、ご自身がお考えになっているところとは異なる要素が重視されることが多くありますので、専門家にご相談されるのもよいと思います。

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