結婚前の風俗が原因で離婚?

ご相談内容

妻と結婚して半年経ち、妻の妊娠がわかり、2人で喜んでいました。わたしは、結婚前、複数の風俗の女性と肉体関係を持っており、実は梅毒に感染していたのですが、未発症だっため、自覚がなく、まさか自分が梅毒に感染していたとは知りませんでした。

その結果、妻に梅毒を移しており、妻が妊娠検査で、梅毒の罹患が発覚し、大問題になりました。梅毒に感染した妊婦では、一般的に子が流産、死産となったり、子が梅毒にかかった状態で生まれる先天梅毒となることがあることもあり、妻は堕胎を選択しました。

妻は、結婚前のこととは言え、絶対許せないと、離婚調停を申し立てると言っています。わたしは、結婚してからは、風俗や他の女性と関係をもっていないし、離婚したくありません。

結婚前の女性関係が原因で、離婚しなければならないのでしょうか。

離婚調停

結婚後、たった一度だけ浮気をしてしまい、妻に問い詰められて、仕方なく浮気を認めたために、1年後に、やっぱり許せないから離婚してほしいと言われることもあります。

ただ、夫婦の一方が離婚したくても、もう一方が離婚に同意しないという場合、協議離婚はできません。

どうしても離婚したい場合は、裁判所に調停をもとめることになります。

裁判所では、民法770条に定められている正当な理由がない限り、離婚をみとめません。

その理由とは、以下の5つです。


- 配偶者が浮気(不貞)をしたとき
- 配偶者から悪意ですてられた(遺棄された)とき
- 配偶者が3年以上、生死不明のとき
- 配偶者が回復の見込みがない強度の精神病にかかっているとき
- 婚姻を継続することが難しい重大な理由があるとき

たった一度の浮気や結婚前の女性関係

ご相談者様の場合は、婚姻期間中の浮気ではないので、不貞をしたという理由には当てはまりません。

ただ、妻としては、梅毒罹患が原因で「婚姻を継続し難い重大な理由」になることを主張できます。

裁判所では、調停や裁判の間、やり直すにしろ、離婚するにしろ、2人でもう一度話し合い、和解することを勧めてくることも多いです。たった一度の浮気の場合には、それが離婚事由になるには酷だと判断されて、必ずしも離婚理由になることはないかもしれませんが、ご相談者様の場合は、妊娠した妻に性病を移しています。

大阪地裁 昭和47年11月20日

ご相談者様に近い判例があります。この判例では、夫が結婚前、複数の女性と関係をもち、性病に理解して、そのことに気が付かないまま、妻と婚姻し、妻に性病を移し、妻はそれを理由に夫との離婚調停を申し立てると同時に、通院費だけでなく、慰謝料請求をしました。

裁判所は、夫が性病にかかっていることをしらなかったとはいえ、結婚前に適切な診断をうけるべきであるという注意義務を怠った過失があると判断しました。

その上で、妻からの離婚請求を認め、夫に治療費などの支払いも命じました。

妻への身体的ダメージ

ご相談者様の場合は、妻が妊娠し、夫の病気が原因で堕胎したという事実は、精神的のみならず、身体的被害も大きいものです。

妻が離婚請求をしてきた場合、離婚事由として認められる可能性は高いものの、夫も「知らなかった」わけであり、婚姻生活を継続したいという意思があるならば、まずは妻に謝罪し、どうしたら婚姻生活が継続できるかをよく話し合ってください。

なお、最近では風俗店やお店の利用に関して、不貞行為ではないと明言する裁判例を持ち出すことも散見されますが、基本的には不貞行為であると考えてください。

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