DVが原因で離婚した元夫から、子供への面会要求を受けています。暴力を思い出して会うのも怖いのですが、どうしたらよいでしょうか。

ご相談内容

A(女性)さんは、1年前にDV(ドメスティック・バイオレンス)が原因で、元夫Bさんとんと離婚しています。娘が1人いて、Aさんが親権者となり引きとり、育てています。離婚の時、娘との面会について特に話し合いはしていませんでした。

ある日、Bさんが娘に会いたいと連絡をしてきて、突然自宅に押しかけてきてました。結婚生活時に、娘に暴力を振るったことはありませんでしたが、Aさんは当時の被害を思い出して、顔を見るのも怖いです。できれば、娘には会わせたくないし、Aさんもこれ以上関わりたくありません。この場合、どのように対応すればよいでしょうか。。

面会交流のとりきめ

面会交流については、子供の利益の観点から面会交流の必要性が認識され、平成23年の民法改正で、協議離婚の際に面会交流についても取り決めをする事項として明記されました(民法766条1項)。

これ以前は面接交渉といって、問題の大きい他方親との交流は、制限するむきが主流でした。しかし、子の福祉の観点から面会交流させるべきとの流れに法律が動き、現在に至る経緯があります。

過去の判例と最近の傾向

今回のような結婚生活時に、妻がDVを受けている場合、それを目撃した子供も精神的に不安定になることもあります。児童虐待防止法2条4号においても、「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力を児童に著しい心理的外傷を与える言動」として児童虐待にあたるとしています。

従って、全夫からの面会交流は、前妻の保護と子供の福祉の観点から慎重に進めるべきです。とりわけA(女性)さんは、一人で子を育てており、面会交流と言っても積極的に時間が取れない事情もあるでしょう。しかも、直近1年前にDV(ドメスティック・バイオレンス)が原因で離婚を選択しているのであれば、なおさら、顔を合わせたくはないでしょう。娘さんの年齢はもとより、Bさんが娘に会いたいと連絡をしてくるのも、自分勝手と認識しても不思議ではありませんね

面会交流を却下した判例として、前妻が夫の暴力により、離婚後PTSDになり、また母子関係を立てなおす努力をしていることから、前妻への心理的負担を考慮して、面会交流の申し出を却下しました。

しかし、面会交流に関する民法改正以降は、子供の利益を優先して面会交流を認める傾向にはあります。今回のように、前妻にDVがあったとしても、子供に対して直接の暴力がない場合は、面会交流を拒否することは難しくなってきています。

面会交流の進め方

離婚に際して、子供の面会について取り決めがされていたとしても、今回のようなDVがあった場合は、前妻が前夫に合わないような細心の注意が必要ですし、第三者の助けがないと実現が難しい場合も多いかと思われます。

面会交流を支援する団体も多くありますので、それらの助けを借りるのもよい方法かもしれません。受けられる支援の内容は、面会交流を円滑に行うために、カウンセリング、面会交流のルールの確認、日時などの連絡の仲介、付き添いサービスなどもあります。場合によっては、第三者機関、代表的なものにはFPICという組織があります。このような方法は広く用いられていますが、順番待ちの実情も指摘すべきです。

面会交流の取り決めの話し合いが困難な場合

今回のご相談の場合、離婚前にDVがあったとしても、子供の面会交流を一方的に拒否するのは難しいかもしれません。その場合でも、家におしかけてこないような取り決めをする必要があります。

勿論、このような場合では全夫に会うことは困難なので、家庭裁判所に対して調停の申し立てをして、面会交流に関する取り決めをすることができます。その際、支援団体から前夫に会わないように支援をうけることもできると思いますし、弁護士に相談されるのも一つの方法です。この場合、面会交流調停以外の話合いも可能でしょう。

再び暴力をうけないように

離婚後にも再び暴力を受ける恐れがある場合には、接近禁止命令(DV防止法10条)を地方裁判所に申し立てることもできます。とりわけ、Bさんが突然自宅に押しかけてきて、再度暴力事件に発展してしまうと、離婚をしてたてなおしにならないともみれますから、検討する必要があるでしょう。

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