ご相談内容
夫が浮気して、愛人のところへ出て行き、2年経ちました。
最初は怒りのあまり、怒鳴り込もうとおもったのですが、今は、子どもを3人抱えて一人で育てています。
わたしと子ども達の生活費は十分振り込まれてくるのですが、お金以外の話しは、何もしていません。
不貞慰謝料請求も、3年の時効が来る前に、請求しようかとおもっていたところ、突然夫から、今わたしと子どもが住んでいる夫名義の家と、慰謝料込の財産分与として1000万円を振り込むので、離婚してほしいと言われました。
養育費も子ども達が成人するまで、月15万円は払うと、言っています。
確かに、夫の年収から考えると、条件はいいと思いますが、どうせ愛人との間に子どもができて、わたしと別れろと言われているのだと思うと、意地でも離婚したくありません。
ところが、夫は、離婚調停を起こしてきました。離婚しなければならないのでしょうか。
有責配偶者からの離婚請求
ご相談者様の夫のように、愛人を作る行為によって離婚原因を作った側を、「有責配偶者」と言います。
裁判所は、有責配偶者からの離婚請求を認めません。たとえ、離婚調停を起こしても、離婚訴訟を起こしても、同様です。
しかし、最高裁は、平成62年9月2日に、35年ぶりに判例を変更して、有責配偶者からの離婚請求を認めました。
ただし、無条件で、認めたわけではなくて、いくつかの条件をクリアした場合に限っています。
その条件とは、
1 夫婦の別居期間が長期間に及んでいること(短くて8年で認めた例もあります)
2 未成年者の子がいないこと
3 相手方配偶者が、離婚により、精神的、社会的、経済的に、極めて過酷な条件に置かれないこと(離婚した後に、相手方が経済的に困らないことです)
です。
子どもがいる場合
ご相談者の場合は、子どもが3人いて、全員未成年者ですので、上記の2がクリアできません。また、別居期間も2年半ですので、短すぎます。
従って、離婚調停を起こされても、「離婚しません」と答えればいいでのです。離婚調停でも裁判でも離婚は認められません。
従って、夫も、愛人も、諦めるしかありません。
財産をもらって離婚する道
ご相談者のように、意地で離婚しないという道もありますが、現在の夫の年収より高い養育費や、慰謝料込の財産分与を提示されていることを考えると、離婚して別々の道を歩むことも選択の一つかもしれません。
この先、夫が破産したりして、慰謝料込み財産分与も支払いが困難になるかもしれません。それらの将来のリスクを考えると、意地だけで戸籍上の夫婦を継続することの意味もまた考えてみてください。
とにかく、離婚を拒否、という意思を示すだけでなく、もっと有利な財産分与や養育費、慰謝料などを引き出して、公正証書にするなど、交渉してみるのはいかがでしょうか。
調停委員も、有責配偶者からの離婚請求には厳しい立場であるので、ご相談者からの申し出には前向きに協力してくれるかもしれません。