協議離婚後、しばらくして、催促しても養育費を払ってくれなくなりました。

ご相談内容

和解して協議離婚して、その際、夫は養育費を月5万円支払い、妻は子供の親権をもつ約束をしました。親権は決めないといけないと離婚届に書いていたので、喧嘩の末、なんとか決めました。離婚後数年間は、月5万円ずつ支払っていたのですが、最近養育費を支払ってくれなくなりました。

何度も催促していますが、無視されていて、子供の学費が払えなくなり困っています。どのように対応したらよいでしょうか。

公正証書による合意

一番確かな方法は、協議離婚の際に、公正証書を作成して、養育費の支払い義務について取り交わしておくことです。離婚届だけでは養育費は自動的に決まることがありません。

公正証書があれば、支払いが滞った場合でも、公正証書に基づき強制執行することができます。その時、未払いの養育費と併せて、将来分の養育費も一括して強制執行の申し立てをすることができます。

ちなみに、公正証書を作成するには、公証役場にでむき公証人と打ち合わせが必要になります。なので、実際に作成するのは結構骨が折れますので、相手方が嫌がってきた場合には、合意書の形で離婚協議書をつくるだけでもなんとかできます。

これでは強制執行まではすぐできませんが、公正証書に基づく強制執行は、めぼしい財産がない場合でも、就業先が明確な場合には、就業先に給与を差し押さえることが多くあります。そうすると、差し押さえられた側が就業先を辞めない限り、差し押さえを行うことは可能です。

公正証書がなかった場合の方法

先ほど少しご説明しましたが、離婚のときに、公正証書を作成せずに、口頭やそれ以外の独自の書面で養育費の取り決めをした場合には、二つの方法で、養育費の支払い義務を確定しましょう。

1. 地方裁判所に提起する
離婚の際に、夫婦で養育費を取り決めしているということは、合意されていると考えられます。その際に書面や、最低限のラインのやりとりだけあるのであれば、合意に基づく履行請求が可能です。

それにも関わらず、支払わないということは、支払義務者の債務不履行と捉えて、地方裁判所に支払いの履行を求めて、給付請求の訴えを提起できます。この場合、原則、将来の養育費は給付対象ではありませんが、例外もあります。

その場で和解などをして、公正証書と同じだけの効力、専門的には執行力といいますが、強制執行が可能である効力を有する書面をえることができます。

2. 家庭裁判所への申し立てをする
離婚の際に、夫婦で養育費の取り決めをしていても、それは確実な合意とは言えず、夫婦間の協議ができていないと捉えて、家庭裁判所に申し立てができます(その場合、離婚後の養育費の請求の問題と同じになる点があります)。この場合、過去の養育費も対象になりえます。

どちらの方法がよいか
1と2の両方を選択することもできますが、その時々の状況によります。弁護士に相談すると、概ね、以下の回答になるでしょう。支払い義務を持った方が、離婚後も生活が変わらず、養育費の額を再検討する必要がない場合は、1の地方裁判所への訴えを選択することが多いです。

しかし、通常、離婚後は、支払い義務者が再婚したり、収入が変化することが多く、一方、子供の養育費は、長期に渡ることが多く、また確実に支払ってもらう必要があります。そのため、離婚後でも2人でしっかりと協議の機会がもてる、2の家庭裁判所への申し立ての方がよいかもしれません。

調停では、2人の、離婚の納得度、生活状態の変化、子供との面会交流なども視野に入れて、養育費の不払いの理由も柔軟に話し合いの対象になります。

家庭裁判所での調停であれば、2人の事情の変化も考えて、妥当な養育費を検討することもできます。また、家庭裁判所の申し立ては、弁護士を選任しなくても、地方裁判所での訴訟提起とは異なり、申立て費用も安価であるために、本人が自分で手続きすることも可能です。

養育費未払いで、経済的に困難な場合

今回のご相談のように、養育費の支払いが滞ったために、子供の学費など養育が困難になっている場合は、家庭裁判所に、審判前の保全処分という方法も選択できます。保全処分というのは、めぼしい財産が処分されてしまい、とにかく緊急で今ある財産を仮に押さえておく場合に用いる手段です。

養育費で用いることはあまりないのは事実のなのですが、子供の監護費用分担の審判、扶養の審判を、まだ本件の解決前に、養育費の仮払いを申し立てるものですから、インパクトは大きく、支払いの可能性もあります。しかし、萎縮効果も生むので、しっかり検討する必要がありましょう。

支払いが履行されない危険があるときは、裁判所は、仮差し押さえ、仮処分などを命じた裁判例も存在しています。

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