youtubeにおいても「セクハラ問題」について、事例を挙げながら適切な解決方法についてお伝えしていますので、ご覧ください。
内容はつぎの通りです。
オーナーが店舗スタッフにセクハラをしています。
- 相談者は居酒屋店主で男性オーナーのセクハラが酷い
- 挨拶の時に胸やお尻を軽く触る
- 笑顔で返していると、エスカレートしていった
- 店舗外でのデートを要求された
スタッフから相談もあり、辞めていくスタッフも多いとのことです。
こんな内容は、はたしてセクハラになるのでしょうか。
弁護士 齋藤健博の見解
セクハラとなりうるが犯罪とするには「要件」を満たす必要がある
確かに「挨拶の時に胸やお尻を軽く触る」という行為や「マッサージと称し肩から触れる」という行為は、あいさつなどの一環を超えているとみることは可能でしょう。
ただし「強制わいせつ罪」として問うには弱いと考えられます。
これらの行為は犯罪になりうるものではありますが、セクハラを犯罪とするには『要件』を満たす必要があります。
『要件』とは分かりやすく言い換えますと「立証に必要な事実」のことです。
つまり今回のケースを強制わいせつ罪として問うには証拠が必要で、セクハラの事実がスタッフの証言だけであるこのケースでは「犯罪」とはなりづらいとも言えるのです。
刑法第176条に定められており、今回の場合では「13歳以上の男女に対して暴行または脅迫を用いてわいせつな行為を行うこと」になります。この「わいせつな行為」に該当するかどうかが問題なのです。
会社の人事部やコンプライアンスを担当する部署への相談
犯罪に問うことがただちにはできないものとはいえ、精神的に背負いこんでしまうことは事実だと思います。
犯罪にならないからあきらめる必要があるのではなく、たとえば、オーナーではなく、会社の人事部やコンプライアンスを担当する部署に相談するのもひとつの手段と言えます。
最近では企業に必ず担当者を設置していることがほとんどです。ただし店舗内や支店グループ内の相談の場合には、都合が悪いことはすべてもみ消されてしまう可能性があります。
そのため、本社の人事部やコンプライアンス部へ連絡して「法律的な解決を考えている」などと伝えてることも良いでしょう。
逆ギレしてオーナーに解雇されそうになったら
「そんなことを言うなら、お前はクビだ!」
と、オーナーが逆切れしてくることがあるかもしれません。
このような解雇は許されるものではありません。
「不当解雇」と呼ばれている問題で、法的には、解雇権濫用の法理というのが確立しています。
労働者を不当な理由で解雇することです。
不当解雇された場合には無効や撤回を求めたり、労働賃金や慰謝料を請求したりすることもできます。
ことの実態が、セクハラに対する拒絶の意思表示が解雇の原因であるとするならば、解雇権の濫用となりやすいでしょう。
それでもうまくいかない場合には弁護士に相談する
どうしても解決が難しいという場合には、弁護士に相談して個人に対する不法行為責任、もしくは法人に対する使用者責任を追及することがいいでしょう。
不法行為責任とは、他人の権利ないし利益を違法に侵害する行為のことをいい、損害賠償請求ができる可能性もあります。
使用者責任とは、不法行為責任が成立しているのが、雇用主の支配できる領域で行われた行為であれば、法人側にも責任追及することができるものをいいます。
注意が必要なのは、いずれにせよ、合意があった場合には、セクハラではありませんから違法行為にはなりません。よく「本人と合意があったかどうか」って、話題になりますよね。
本当にセクハラだったのかということについては、しっかりと証拠を保存しておくことが大事だということです。
難しく考えず、証拠といっても、自分自身が受けたセクハラの内容を日記などに記しておくようなものでも構いません。
どんな些細なことでもセクハラに関わるものは全て残しておく、それが将来的に有利な証拠となる可能性が高いのです。
セクハラの証拠例としては次のものがあります。
当事者とやり取りしたメモ、手紙、留守番電話の録音、音声メモ、携帯電話の着信履歴、メール ・SMS の記録、録音テープ、データ写真、画像データ、企業内の相談窓口等における相談票など
セクハラがあったという証明は、「合意がなかった」という証明にもなります。
毅然とした態度で臨みましょう。
裁判しないとしても示談なども交渉することができるわけですから、弁護士に相談しても裁判を必ずしもしなければならないことではありません。ひとりで抱え込むのではなく、弁護士に話をするだけでも、解決できる問題もあるのです。