家事をしなかった妻に財産を分けたくない

ご相談内容

結婚前までは仕事をしてよく働く女性だと思い結婚を決めて、彼女はいわゆる寿退社をして、家事に専念すると専業主婦になりました。

ところが、結婚した途端、家事を全くしないことがわかりました。食事はデパートで買ってきたお惣菜ばかりで、洗濯も下着までクリーニングに出しています。掃除もハウスキーパーさんを雇っています。

日中は、友人とホテルで食事をして、買い物やエステで豪遊しています。これでは結婚した意味がないと思い、妻に何度か注意したのですが、変わりません。

結局、私も他に好きな家庭的な女性ができてしまい、いわゆる不倫をして、離婚を望んでいます。

妻は、離婚には応じているのですが、多額の財産分与を要求しています。まったく、家事をしなかった妻に、なぜ私の稼いたお金を半分渡すのか、納得がいきません。

婚姻期間中の財産

結婚後に、妻が、家事や育児や仕事など、どの程度していくかについては、その夫婦により様々です。

たとえ専業主婦であって、夫が外で働いている間、家事をしてくれると 期待していても、食事は、ほとんど外食であったり、コンビニの惣菜であるという家庭もあります。

現在では、共働き夫婦も専業主婦の数を上回っていることから、家計を支えるために、夫も妻に外に出て働いてほしいと希望する人も増えています。

ご相談者様のように、家事をほとんどしない妻に対して、離婚時に、財産を分与する事は納得ができないと思う夫も多くいます。

ただ、実際は、婚姻期間中に形成した財産がある場合には、家事をしないことを理由に財産分与請求を、拒否する事は難しいでしょう

財産分与請求は、配偶者の一方が、財産形成や財産維持への寄与度によりますので、妻の財産形成への寄与が低いことを、証拠で示していくことによって、妻への財産分与額を減らしていくことも可能になる場合もあります。

ただし、寄与度の議論は実質的にはお医者さんや画家さんなど、完全に個人の能力に依存している関係がないと、なかなか認められにくいのは事実です。

財産分与

民法768条3項は、「前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情考慮して、分与させるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」と規定しています。

つまり、財産分与の基準については、この条文しかないために、財産分与の額や方法は、裁判所の裁量に委ねられている、と言うことも意味しています。

財産分与には3つの種類があります。

1. 精算的財産分与
これが一般的な財産分与請求とされています。離婚時、夫婦共同生活中に築いた共通の財産を、精算することを意味します。

2. 扶養的財産分与
配偶者が、離婚後に、生活のための収入がすぐに得られない場合に、生活基盤を作るまでの間に、相手が財産を負担するものです。これが認められるのは限定的な場合です。

3. 慰謝料的財産分与
既に財産分与を得ている場合でも、離婚による慰謝料請求はできるとしていますが、実際では、財産分与と慰謝料請求は同時にしているので、慰謝料の要素を含めた財産分与を切り離してすることは稀です。

イメージとしては、1が原則、その他調整をするうちに、最終段階で2や3の要素が濃くなっていくことがほとんどではないでしょうか。

清算的財産分与

清算的財産分与は、離婚にあたって、主に専業主婦の場合には、婚姻中に夫が働くことを支えていても、全ての財産の名義は夫になっていることが多く、妻の家事労働が評価されないために、その不公平をなくすために、どちらの名義であっても、夫婦は、公平に財産を分けることになっています。

寄与度を主張

最近では、共働き夫婦も増えてきており、夫婦の財産や家計分担の方法も様々です。

そのために、夫婦が一律に2分の1で財産を分けることも、実情にあわないことも出てきているようです。

ご相談者様の場合も、妻が全く自分の財産形成や夫婦生活維持のために、貢献していない場合は、その内容を詳細に主張して、2分の1ではなく、実際の寄与度で分けることも可能です。

財産分与の基準時

財産分与する基準時は、原則として別居時です。

つまり、ご相談者の場合のように、財産分与の額を減らしたい場合は、離婚の意思が固まっていれば、早く別居して、その日を起算日とします。

つまり、別居した日までの財産を対象とすることにより、別居日以降を対象とせず、財産分与の金額を少しでも減らすことが可能でしょう。

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