ご相談内容
夫の浮気が原因で、離婚しました。夫は早く、家を出て、愛人と一緒になりたかったのか、離婚してくれれば、なんでもやる、自分名義で購入したマンションもやる、と言われて、貯金の半分と暮らしていたマンションを財産分与として譲り受けて、協議離婚しました。
ところが離婚して1年くらいしたら、元夫から連絡があり、「離婚前に、マンションを譲り渡したが、あれは婚姻中の夫婦の贈与だから、取り消す」から返せと、突然言い出しました。
多分、誰かの入れ知恵だと思うのですが、私はマンションを返さないといけないのでしょうか。
財産分与
財産分与とは、離婚時に、「婚姻中に、夫婦2人で築いてきた共有の財産を公平に分ける」というものです。
基本的には、夫婦が婚姻した時点からの財産になりますので、例えば、独身中に貯金してきたお金は対象になりません。
婚姻してから2人で築いてきた、ということですから、どちらの名義でも、どちらかが専業主婦でも、どちらか一方の給与で購入したとしても、全て夫婦2人の財産になります。
また、これらの財産は基本的には、2分の1で分けますが、どちらかがその財産形成に大きく貢献した場合は、その寄与度で分配します。
財産分与の種類
1 清算的財産分与
上記に記載したように、婚姻してから夫婦2人で築いてきた共有財産の清算です。財産分与の基本は清算的なものによるものが多く、実際にどの程度あったのかを確定したのち、2分の1にすることがほとんどです。
2 扶養的財産分与
離婚後に、どちらか一方が独立して生計をたてられるようになるまで、一時的な援助金として払われるものですですが、扶養をしてあげる観点から、収入が多いほうが譲歩し、そうでないほうに多めに分与をするものです。
3 慰謝料的財産分与
慰謝料の意味合いがある清算です。離婚に至るまでの、精神的苦痛に対して、財産分与の中で十分に補填されない場合に考慮されます。ただし、財産分与と別に慰謝料は発生するものである以上、財産分与をもって慰謝料にするものとなりますが、別で慰謝料を請求されるリスクはあります。
4 婚姻費用
婚姻中の生活費です。離婚前であれば、別居中であっても、収入が多い方が少ない方に生活費を支払いますが、この未払分がある場合、財産分与の中で考慮することもあります。
離婚の直接的原因
ご相談者様のように、離婚の原因を作ったのは夫であり、その場合、妻が今住んでいる家などの不動産をそのまま譲り受け、それを条件として妻が離婚に合意することもあります。
妻が夫から、マンションなどの自宅を譲り受けたのは、離婚と切り離せないものであり、このマンションは、離婚時の財産分与に該当するものと思われます。
つまり、元夫が主張するように、取り消しが可能な夫婦間の譲渡とは異なる性質のものなので、返還する必要はありません。
夫婦間の譲渡
民法754条では、夫婦間における贈与などの契約の取消権を認めていますが、夫婦間の契約取消件は、「婚姻中」に限定されます。
従って、ご相談者はすでに離婚しているので、取消権は行使されませんし、またたとえ婚姻期間中であっても、実質的に婚姻関係が破綻している場合は、夫婦間の取消権は行使できないのが、裁判所の考え方です。