高額所得者の婚姻費用

ご相談内容

性格の不一致が原因で、妻と離婚することになりました。

妻は専業主婦なのですが、私はコンサルティング会社や別の収入もあり、年収が4000万円あります。

離婚の原因でもありますが、私は仕事一筋で、趣味もなく、浪費することもないのですが、妻は、私の収入を好き勝手に使って、ブランド品や高級品を買い漁り、正確には把握していませんが、月に200万円は使っていたのではと思っています。

離婚するにあたって、すでに別居していますが、妻が婚姻費用を請求してきており、今まで通りの生活を維持すべきと月額200万円を請求してきて、今までも払っていたんだから、十分払えるだろうと主張しています。

婚姻費用を計算するにあたって、標準算定方式を見ると、年収の上限は2500万円までしか記載がありません。2500万円を超えている高額所得者の婚姻費用はどのように考えるべきでしょうか。

標準算定方式

標準算定方式では、年収を金額別に分けて、基礎収入割合を提示しています。

しかし、表に記載しているのは、給与所得者については2000万円、自営業者については1546万円までで、その基礎収入割合は、給与所得者については38%、自営業者については48%までしか設定していません。

このような場合、これを超える収入がある場合、どのように基礎収入割合を出して、婚姻費用を算出したらよいでしょうか。

もちろん、夫婦の生活のあり方や考え方なども考慮はされますが、一般的には、2つの場合に分けて考えます。一つは、義務者(婚姻費用を払う側)の総収入が、上記の上限額を若干超える場合、もう一つは、上記の上限額をかなりこえている場合、です。

上限額を若干超えている場合

義務者の総収入が、給与所得者で、おおよそ2500万円くらいまで、自営業者でおおよそ2000万円くらいまでであれば、標準算定方式の一番上限額を適用することが一般的です。

したがって、給与所得者であれば、2500万円でも基礎収入割合は38%(少し下回って37%と仮定することもあります)、自営業者であれば、2000万円でも基礎収入割合は45%(少し下回って44%と仮定することもあります)で、計算されることが一般的です。

上限額をかなり超えている場合

義務者の総収入が、上限額をかなり超えている場合には、この基礎収入割合を使うことが難しくなるために、この算定方式ができる前の計算式の原点に立ち返って計算することも多いです。

総収入から、公租公課、特別経費を控除した上で、職業費の平均的割合を推定して控除し、その基礎収入を決めた上で、生活費指数から計算することが、わかりやすいでしょう。

ご相談者様の場合

ご相談者様の場合は、権利者(生活費を貰う側)は専業主婦ですが、専業主婦でも、潜在的稼働能力として120万円程度とします。

相談者である義務者(生活費を払う側)は、年収4000万円ということで、公租公課の合計が1750円、特別経費が350万円、職業費を12%、とすると、

義務者の基礎収入は、4000万円ー1750万円ー350万円ー(4000万円✕0.12)の計算式となり、1420万円の基礎収入です。

義務者の基礎収入は、120万円x0.46=55万円とすると、
婚姻費用は、(1420万円+55万円)x100÷(100+100)ー55万円=682万5000円が年間の生活費となるので、月額56万8750円と計算されます。

婚姻費用

もっとも婚姻費用とは、生活費であり、贅沢な生活をするためでなく、今までの贅沢な生活を維持する目的でも、保証するものでもありません。

その本来の目的に鑑みれば、よほど特殊な(芸能人のような)事情がない限りは、月額100万円を超えるものではないというのが、裁判所の一般的な見解です。

なぜなら、実際は、高額所得者の場合は、夫婦の住宅ローンや学費を負担していたり、諸々の経費を払っていることも多いのが実情です。

これらを加味して、常識的な金額の婚姻費用分担額が決まることになります。なお、厳密な計算をすると、きりがない性質も有していることは指摘ができますので、争う場合には、しっかり主張をしなければなりません。

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