別居中の婚姻費用の支払い

ご相談内容

妻と離婚に向けて、調停中です。妻は子供を連れて家を出ていってしまい、私は、一緒に暮らしていた家で一人で住んでいます。

妻と子供には、別居していても、婚姻費用として、毎月生活費を支払っていますが、調停で争っている内容が、妻が勝手に連れて出ていたた子供の親権者のことで、もう1年以上決着がつきません。

その間、ずっと妻と子供の生活費を支払っており、私も自分の家のお金を払っていて、二重生活の支払いの負担がこれ以上耐えられません。一体いつまで妻の生活費を支払わなければならないのでしょうか。

婚姻費用分担

夫婦間の婚姻費用分担義務は、婚姻によって生じます。夫婦として生活するわけですから、お互いに同程度の生活を相手にさせる義務(生活保持義務)があります。

これは、民法760条の「夫婦は、その資産、収入、その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を負担する」とあります。この婚姻費用の負担義務は、一般的に「別居の解消(または同居の解消)または離婚(又は婚姻の解消)に至るまで」としています。

東京高決昭和55年3月7日でも、「離婚訴訟が係属している場合であっても、夫婦である以上、現実に婚姻解消に至るまでは婚姻費用負担義務を免れるものではない」と、しています。

従って、ご相談者の場合も、婚姻関係が続いている以上、離婚するまで婚姻費用を支払う義務があります。

婚姻が破綻している場合

学説によっては、婚姻関係が破綻している場合は、婚姻費用の支払いを否定または制限するものもあります。

民法760条に定める夫婦とは、実質的に夫婦の実態がある者であり、破綻して形骸化している夫婦は、この場合では夫婦とは言わないと主張する学説もあります。

有責配偶者からの婚姻費用

例えば、妻が浮気をした有責配偶者であることによって、婚姻関係が破綻した場合は、その妻は、夫に対して婚姻費用を請求することは、信義則違反又は権利濫用によって許されないという審判例が目立ちます。暴力やDVなどでも有責性を帯びることが多くあります。

実際には、調停の現場では、夫が妻の浮気など有責行為を主張しても、その証拠が明らかで、有責配偶者であることが明白でない限りは、婚姻費用を負担することになります

もし、夫が有責配偶者で、妻は、夫の浮気などによって婚姻関係が破綻したことを証明できる証拠がある場合は、調停は不成立にして、審判で立証主張する方がよいでしょう。

ただし、いづれにせよ、子どもへの生活費は支払い義務があります。

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