離婚民事訴訟中に、妻の不倫の疑いがありました。別居中の自分名義の自宅は、鍵もあるので、無断で入り不倫の証拠も入手しましたが。

事例

夫が不倫をしたと疑われ、夫婦仲が悪くなり、妻と3年間別居中です。妻は、夫名義の自宅にそのまま住み、夫が別のマンションを借りて住んでいます。夫は、妻に対して、離婚の民事訴訟を起こしましたが、妻からの財産分与や慰謝料が高額なため、なかなか和解できず、困っていました。
妻が浮気をしている疑いがあったため、離婚の民事訴訟を有利にするために、夫は、自分名義のマンションに、無断で入り込み、浮気の証拠も写真にとりました。
その行動に怒った妻は、夫を住居侵入罪で訴えました。
マンションは、夫名義で、鍵も持っています。

判決

別居中であっても、かつて自分が住んでいた家で、しかも、名義も自分で鍵もある、ということであれば、自分のうちへ帰って何が悪いと、つい無断で入り込んでもいいような気持ちになります。

今回のような、不倫現場を押さえたいということだけでなく、家財道具や必要な書類を取りに帰っただけだという理由もあります。

動機や目的は様々あれ、住居侵入罪の保護法益論といって、刑法上、解釈も分かれている難しい分野であることは事実です。

今回のご相談でも、夫は、自分のうちに帰り(侵入し)、入った理由もある、と主張しましたが、刑法上は「現状」つまり、別居中、の秩序を尊重するという考えがあります。

わかりやすく言うと、いったん住居を離れると、実際に居住している人間側固有のプライバシーなどが及んでしまい、その状態を侵害することは許されないとの考え方があるのです。

そのため、いかなる理由でも、無断で家に入ったということで、住居侵入罪、有罪罰金7000円の判決がくだった裁判例があります。

鍵があっても、無断で侵入することは、紛争の恐れがありますので、いったん事前に先方に承諾を取っておくことが賢明です。

そもそも、ご相談内容は、夫が不倫をしたと疑われ、夫婦仲が悪くなり、妻と3年間別居に至って経緯があります。しかし、妻は、夫名義の自宅にそのまま住み、夫が別のマンションを借りて住んでいいるケースはよくあり、この場合、妻側は離婚を拒否することが多くあります。

しかし、妻が浮気をしている疑いがあったことだけを根拠とすると、3年間も別居の事実が積み重なってしまっていること、名義が夫でも特段荷物の授受などではない限りわざわざ自宅に戻る必要がないこと、事前に連絡をすることは代理人弁護士などを通じてできるはずであろうことなどを根拠とすると、離婚の民事訴訟を有利にするために、夫は、自分名義のマンションに、無断で入り込み、浮気の証拠も写真にとってしまうと、不当な目的と判断されてしまうことはあり得るのです。

マンションは、夫名義で、鍵も持っていることから、理不尽に感じてしまうかもしれませんが、慎重に行動するほうが安全でしょう。

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