
ご相談内容
結婚して3年目の男性です。結婚してすぐに子供にも恵まれ、仕事もうまく行っていて、子供も可愛く、家庭生活も一見円満で問題ないのですが、子供が産まれてから妻がセックスを拒否しています。
そろそろ2人目はどうかと聞いているのですが、その都度疲れているとか、そんな気になれないなどと、パパなので男性と見られない、などと拒否されていて、セックスレスが2年も続いています。
それ以外は、妻は家のこともちゃんとやってくれて、優しいですし、家庭円満なのですが、このまま一生セックスレスな生活を送るのかと思うと、浮気するわけにもいかないですし、離婚することも考えてしまいます。
離婚原因
離婚原因を定めた民法770条1項のうち、5号では、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」としていますが、セックスレスがこれに該当するかどうかが問題となります。
最高裁の判例
昭和37年2月6日最判によれば、妻が夫に対し、1年半の期間にわたり、性交渉をすることができなかったことが離婚事由と認めた事案です。
この判例では、「夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項である」とした上で、夫婦の「性生活を嫌悪し離婚を決意するに至ったことは必ずしも無理からぬところを認められる」として請求を認めました。
これは「夫婦間の性生活は、婚姻が男女の肉体的交通を支柱として成立していることを考えれば、婚姻の基礎として最も重要なもの」としています。かなり古い最高裁判例ですが、今でも根付いている判断です。
性交渉の不存在は、夫婦の根幹が破綻しているとも評されるのです。
その他の判例
京都地判昭和62年5月12日では、夫が自らの性的不能を隠して妻と婚姻し、婚姻から3年以上も性交渉がなかったことについて、妻からの離婚請求と慰謝料請求を認めました。
ここでも、「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情がない限り、婚姻後長期間にわたり性交渉がないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由に該る」としています。
総合的に判断
裁判例から整理すると、性交渉は「夫婦生活の基本として重要視」していると言えます。
ただし、実際の判断にあたっては、単に性交渉がない、というのみにで離婚を認めているわけではなく、他の事情も併せて考慮しています。
つまり、他の事情も検討した上で、婚姻を継続する気持ちがない、「夫婦が婚姻の目的である共同生活を達成しえなくなり、その回復の見込みがなくなった場合」に離婚を認めています。
近年は、夫婦や家族の在り方も様々になってきて、性交渉するしないは、個人の事由であり、強制されるべきものではありません。
社会通念として、「夫婦の性生活が婚姻の基本」とはしているものの、それ以外のコミュニケーションの取り方、性交渉がない場合のフォローの仕方、夫婦関係の実態、などを総合的に判断して、セックスレスに至るまでの、その裏にある、夫婦の関係性、それまでの行動なども含めて、詳細に検討していくべきでしょう。