内縁関係の解消
B(内縁夫)さんは、A(内縁妻)さんと、結婚していると同様な同居生活を、12年間送っていました。子供も1人いて、Bさんは認知しています。お互い、いつか結婚してもよいと考えていましたが、ある日、Aさんから突然内縁関係を解消してほしいと言われました。
Bさんは、深く傷つき、Aさんに慰謝料を請求し、今まで一緒に築いた財産も分けたいと考えています。子供の養育費も払うつもりでいますが、その他内縁関係解消にあたって、認められる権利と認められない権利を教えてください。
内縁関係の定義
内縁関係とは、法律上の婚姻ではありませんが、男女が協力して共同生活をしていている実態があります。これを踏まえ、婚姻に準ずる状態にあると判断されると、法的保護の対象になります。これを準婚理論といいます。
内縁関係と認められるためには
1. 当事者に婚姻の意思が認められること
2. 共同生活をしていること
が要件です。
内縁関係で認められる権利
内縁関係は、法律上の婚姻関係に準じた関係として、法的保護の対象になります。したがって、今回のケースで、内縁妻Aさんから内縁夫Bさんに内縁関係解消を、一方的に申し入れていますので、以下の請求が可能です。
財産分与
内縁関係解消においても、婚姻関係解消と同様に、共に気づいた財産について財産分与を請求できます。基本は開始時から別居時までをいいます。
損害賠償
正当な理由なく、内縁関係解消を求めていますので、これも婚姻関係解消と同様に、慰謝料や財産的損害について賠償を請求できます。特に、正当な理由なき解消は、損害賠償の対象となりえます。
養育費
内縁の夫が認知している場合には、これも婚姻関係解消と同様に、養育費を負担(逆の場合は請求)します。
年金分割
内縁関係解消の際も、年金分割は可能です。ただし、これは婚姻関係解消と異なり、制限があります。なぜなら、婚姻関係のように公的届出により、夫婦であった期間が明確でないためです。この期間を客観的に明らかにできる国民年金の被扶養者であった期間に限定されます。
内縁関係で認められない権利
相続権
法律上の婚姻でないために、内縁関係の解消がどちらか一方の死亡による場合は、財産的請求はできません。
なお、当事者に相続人がいない場合は、特別の縁故があった者として、家庭裁判所に請求することにより、相続が認められる場合もあります。これは特別縁故者に当たる必要があります。
内縁関係の解消に関する法的背景
婚姻関係が多様化し、必ずしも籍を入れなくても、実態として共同生活を基盤とすることは多くあります。実際、籍を入れるなどして、拘束されたくない価値観を持つ人を尊重する意味合いも重視されてきました。
相続権がなくても、多くの場合は特別縁故に該当することがありますから、内縁関係の実態に応じた法的保護の可能性は高いと言えましょう。