生活費を渡してくれない!離婚決意した専業主婦が獲得したい婚姻費用と悪意の遺棄とは?

この記事のポイント

  • 生活費を渡してくれない場合「悪意の遺棄」として離婚事由になることがある
  • 悪意の遺棄は離婚原因となるだけではなく慰謝料請求や生活費の請求が可能
  • 悪意の遺棄かどうかに目を奪われるのではなく、ただちに婚姻費用分担請求調停や審判を申し立てることが大切

「旦那がパチンコに夢中で生活費を入れてくれない!」

「専業主婦だからと言って生活費をもらえない!」

「生活費を入れないまま、旦那が出て行った!」

「旦那が風俗通いでお金を全然いえにいれない!」

ご主人が生活費を入れてくれないと悩む人が多くいます。専業主婦の場合、今後のことを考えると離婚に踏み込むこともできず、パートで稼いだお金で細々と生活している人も少なくありません。

夫婦にはお互いに協力しなければならないと民法にも定められており(民法752条)、上記のように生活費を入れないような状態を「悪意の遺棄」として離婚原因として認められています(民法770条1項2号)。

そのためこのような場合には、生活費(婚姻費用)の請求や離婚請求することが可能です。

生活費を受け取れない専業主婦が今後どのようにすべきなのかについて、記事を参考にしてみてください。

旦那が生活費を渡してくれない!「悪意の遺棄」とは

「旦那が生活費を入れてくれなくて困っています!」

「もう離婚を考えています!でも専業主婦なので・・・」

「旦那が離婚を拒否してしまって・・・」

このように悩む方は専業主婦の方は多くおられます。

しかし生活費を入れてくれない状況は「悪意の遺棄」として認定されることもあり、離婚理由となったり慰謝料請求することが可能です。

また離婚までに生活費を請求することも可能です。

では「悪意の遺棄」とはどのようなものなのでしょうか。

「悪意の遺棄」ってなに?

そもそも夫婦は同居して相手を経済的に養い、生活において協力し合わなければなりません。これは倫理観として考えられているものだけではなく、民法752条に定められている「同居、協力及び扶助の義務」なのです。

民法には下記のように定められています。

第752条

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

この条文の内容には『同居義務』も定められています。

同居義務は、性質上、強制執行になじまない債務であると考えられており、仮に義務が認められていても、無理やり家に引きずり戻らせる、戻らされるようなことはありません。

現実には、そのため必要な生活費をパートナーに渡さなかったり、同居せずに家に帰らなかったり、生活の上で協力しなかったりすることは「悪意の遺棄」と呼ばれる行為なのです。

「悪意の遺棄」とは、 民法770条1項2号に定められている離婚事由になるものです。下記のように定められています。

 第770条

1、夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 二、配偶者から悪意で遺棄されたとき。

つまり悪意の遺棄とは、夫婦関係が破綻しても構わないと考えて、同居や協力・扶助の義務を怠る行為であるといえます。

「悪意の遺棄」の具体的なケースは?

  • 同居しているのに生活費を渡してくれない、単身赴任の旦那が生活費を入れてくれない
  • 結婚しているにもかかわらず度々家出をしたり、実家に帰ったまま戻ってこなかったり同居してくれない
  • どうやら不倫や浮気をしている様子で浮気相手の家に入り浸っている
  • 自宅で暴力がひどく、出て行かされて家に入れてくれない
  • 働こうとせずに毎日ダラダラ過ごしている、など

「悪意の遺棄」は離婚するまでに生活費を請求できる

悪意の遺棄によって離婚をする際には、離婚するまでに生活費を請求することも可能です。「婚姻費用分担請求」と呼ばれているもので、夫婦である間はお互いに協力しなければならないのです。

婚姻費用分担請求については家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」を申し立てることになります。

なお、調停は話し合いですが、審判という裁判官が直ちに判断をするミニ裁判のような手続もあります。夫婦間の問題は生活費だけでは解決しないことが多いので、調停を申し立てることのほうが多いように思われます。

家庭裁判所では「婚姻費用の算定表」と呼ばれるものが用意されており、様々なケースに応じた婚姻費用の金額を計算することが可能です。

もしこの調停にご主人が拒否した場合、家庭裁判所が婚姻費用について判断を示す審判に移行する、自動的に審判に移行するルールになっているので、離婚の調停のように不成立に終わってしまうなどのことはありません。

「悪意の遺棄」は離婚事由になる

離婚をするためには本来お互いの同意が必要となります。一般には協議離婚と呼んでいます。

ただし「悪意の遺棄」のようなケースの場合、生活費を入れずにほったらかされている割には、協議離婚に応じてくれないということも珍しくありません。

また養育費や親権などの条件で折り合わずに離婚に同意してくれないということもあるでしょう。 

もしもこのような離婚に拒否された場合においても、悪意の遺棄のように民法に定められている離婚事由がある場合には、離婚調停や離婚訴訟によって離婚することが可能なのです。

「悪意の遺棄」は慰謝料請求ができる

専業主婦の場合、悪意の遺棄があったとしてもなかなか離婚に踏み込めずにいる人が少なくありません。

その理由として離婚後の経済的な問題です。

そもそもご主人がお金を入れてくれなかったことによって貯金はほとんどないということも多いですし、働いていてもパート程度のことも少なくありませんから離婚すると収入に不安があるのです。

しかし悪意の遺棄として認定されることになれば、ご主人に対して慰謝料を請求することが可能です。

その際にはご主人から本当に生活費を受け取っていないのか、あるいは出ていったまま本当に帰ってきていないのか、悪意の遺棄と認定できる証拠が必要となります。

そのため離婚を決意した際には、銀行の預金通帳のコピーやLINEなどのやりとり、興信所の報告書など集めておきましょう。

なお、よく質問されるのが、浮気した側から婚姻費用の請求はできるのか?という質問です。

これは、権利濫用として処理をするものもあるにはありますが、婚姻費用分担請求の場合、多くは子を育てている親側からの請求になるので、養育費が含まれている概念になります。

そのため、基本的には不貞行為をした側の親であっても婚姻費用分担請求が認められるケースのほうが多い実感です。

またご主人が浮気や不倫などをしているような場合であれば、高額慰謝料を請求できる可能性もありますから、怪しいと思った時点で証拠を集めたり記録を取っておいたりすることが大事です。

まとめ~生活費を渡してくれない場合には弁護士に相談を

  • 生活費を渡してくれない場合「悪意の遺棄」として離婚事由とされている
  • 悪意の遺棄は離婚原因となるだけではなく慰謝料請求や生活費の請求が可能
  • 一人で抱え込まず離婚問題に精通した弁護士に相談することが適切

ご主人が生活費を渡してくれない場合、専業主婦であることが理由となって、一人で抱え込んでしまっていることが珍しくありません。

今後の生活が不安であるから離婚に踏み込めないということが多くの理由ですが、生活費を請求したり慰謝料を請求することが可能ですから、できる限り早く離婚問題に精通した弁護士に相談してください。

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