裁判のポイント
・妻が積極的に相手を誘って不倫(不貞行為)
・夫が不倫相手だけに対して500万円の慰謝料請求を行う
・夫は妻を許し夫婦関係を継続している
・不倫慰謝料の許容額として100万円に減額されている
この不倫慰謝料に対する裁判では、妻に対する責任追及はせずに不倫相手に対して夫が500万円の慰謝料請求を行っています。
夫と妻との夫婦生活は今後も継続する予定になっており、夫婦生活が破たんしたとまではいえないことから、慰謝料として許容された額は100万円に減額されています。
裁判のポイントをご説明していきましょう。
不倫慰謝料の請求にあたっての事実関係
・不倫慰謝料請求額は500万円(不倫相手にのみ請求)
・不倫までの婚姻期間7年で子供はいない
・不倫は約1年1か月続いており、その間に複数回不貞行為があった。妊娠はない。
・妻が積極的に相手を誘うことによって不倫に至った
・不倫相手は妻が既婚者であることは認識していた
・結局、不倫相手は妻に捨てられている
・不倫相手が妻あてに手紙を出しており、夫のもとに届いて発覚してしまった
・今後も同居して夫婦生活を継続する予定
・夫は妻に対して責任追及はしていない
この慰謝料裁判は、不倫相手だけに慰謝料請求していることがポイントとなっており、不倫をしていた妻に対しては責任追及をしていません。
妻は夫婦関係がうまくいっていないという理由によって、積極的に不倫相手を誘っており、関係は約1年1か月ほど続きました。
最終的に不倫相手は妻に捨てられることになるのですが、不倫相手が妻あてに出した手紙によって事が発覚しています。
裁判での不倫慰謝料算定のポイント
・不倫慰謝料の許容額として100万円に減額されている
・妻が積極的に不倫相手を誘っており、当初は不倫相手は消極的だった
・夫は妻の行為に対して責任追及せずに、不倫相手のみに責任追及している
・夫と妻の夫婦関係は破たんすることなく今後も夫婦継続されている
不倫慰謝料の金額を算定にはいくつものポイントがあって、「婚姻期間」「不法行為の程度」「それまでの夫婦関係」「不倫だと理解していたか」「子供はいるか」などを踏まえて検討されることになります。
そのためそれぞれの事情によって、慰謝料の金額には大きな違いが現れることも多いのです。
今回のケースにおいては、当初の慰謝料請求額500万円から減額されて100万円が許容額とされています。
これは
「最初は妻が積極的に誘っていること」
「夫は妻の責任追及をしていないこと」
「夫婦関係が継続されること」
が減額された要素となっています。
また不倫相手が妻あてに手紙が夫のもとに届いて夫婦関係に影響を与えたという点においては、妻あての手紙であるために夫婦を破たんさせる不法行為にはあたらないとされています。
離婚や別居などの有無によって慰謝料の相場は変化する
ポイント
・不倫慰謝料は離婚や別居などの有無によって慰謝料の相場は変化する
・負担分の請求(求償権)をしない代わりに、慰謝料が減額されることがある
・夫婦関係の継続は、夫婦関係が破たんしたと言えずに慰謝料が減額されることがある
そもそも今回の不倫行為(不貞行為・不法行為)は、不倫相手だけの責任ではなく、妻にも責任のあることです。
そのため本来、慰謝料請求を不倫相手だけにしたとしても、妻にも負担しなければならない義務があります。
しかしそれでは今回のように妻に離婚などの責任追及をせずに夫婦関係を継続するのであれば、相手だけに慰謝料請求する意味がなくなってしまうことになります。
不倫相手から妻に対して負担分の請求(求償権)ができるからです。
そのためこの負担分の請求をしない代わりに、最初から慰謝料を減額されることがあります。
また離婚や別居などをしない今回のケースのような場合には、夫婦生活を破たんさせたとまではいえないとして慰謝料が減額されることもあります。
まとめ~不倫慰謝料に関するお悩みは弁護士に相談を
今回の裁判のポイント
・夫が不倫相手だけに対して500万円の慰謝料請求を行ったが許容額は100万円に
・夫婦関係の継続、妻からの積極的な働きかけなどが減額ポイントに
・不倫慰謝料でお悩みであればすぐに弁護士に相談を
慰謝料請求でのお悩み、もしくは高額な慰謝料を請求されてお困りでしたら、慰謝料請求や男女問題に精通した弁護士に相談することが適切です。
今回の裁判事例の場合、もはや自分自身の力だけで解決することはかなり困難だといえるでしょう。
早い段階で弁護士に相談すれば、介入した時点で相手が要求をのんでくれるようなことがありますし、また仮に調停や裁判になったとしてもスムーズにかつ有利に運ぶことができるのです。
【参考】
不貞慰謝料の算定事例集(新日本法規出版)